ある介護施設での出来事。

認知症を患っている民子さん(仮名)。

夜19時を過ぎると、決まってソワソワ

落ち着かなくなる。

しかし、洗い物をすると途端に落ち着き始め、

軽快な鼻歌もでてくる。

ある日の20時ころ、落ち着きが無くなった

民子さんに、割れても大丈夫なプラスチック製の

カップやお皿など数点の食器洗いをお願いした。

ニコニコと食器を洗う民子さんの横で、介護士の

Aさんは、民子さんの外した入れ歯の洗浄を

行っていた。

そのとき民子さんが、食器洗い洗剤のボトルの

残量を気にしていたため、Aさんは新しいボトル

を取りに、すぐ近くの物品庫に向かった。

Aさんが戻ってくるまでに2分もかからなかった。

民子さんの前に新しいボトルを置くと、民子さんは

安心した表情を浮かべた。

Aさんは、入れ歯の洗浄の続きをすることにした。

しかし!ケースに入れて置いたはずの入れ歯が

ないのです。ケースはそのままで、入れ歯だけが

忽然と消えてしまったのです。

民子さんに「ここに置いた入れ歯、知りませんか?」

と、訊ねましたが民子さんは、入れ歯を外したとき特有の

ハフハフ言葉で「ひりまへんよ~」と答えました。

民子さんの口の中に入れ歯が入っていないのは、

明らかでした。

慌てて、数人の職人を召集し、入れ歯捜査隊の始動です。

1時間2時間と、捜査しても見つかりません。

ゴミ箱の中まで丁寧に何度も探しましたがダメです。

諦めかけたそのとき、一人の職員が

「そうだ!探してないところが一つある!」と言いだしました。

皆は「えっ!どこ?どこ?」と、希望に満ちた声で聞き返しました。

「冷蔵庫だよ!」

それを聞き、心の中では「な!わけ!ないでしょ!」と、思い

ながらも冷蔵室を開けてみたAさんです。

「やっぱり無いねー」

次は、ダメ元で冷凍室です。

すると、製氷箱の中に薄っすら黒い影が…

恐る恐る製氷箱を手前に引くと、そこには丁寧にアルミホイルが

かけられた黒いお椀が!

アルミホイルを剥いでみると、しっかり冷凍された白とピンクの

「歯」が!

皆、突然の捜索隊活動で疲れきっていましたが、疲れも吹き飛んで

大笑い。めでたしめでたし(*^_^*)

丁寧に冷凍してくれたのは、やはり…多分…民子さんです。

大切な入れ歯を、腐らないように冷凍したのでしょうね(笑)

Aさんは、これからはもっと丁寧に入れ歯を磨いてあげましょう。

と、思ったそうです。

民子さんも介護士Aさんもナイスです(*^_^*)